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2026/9/28

デプスインタビューはAIでできる?|AIが聞く・人が聞くの違いと工程別に任せられる範囲

この記事でわかること

  • 「AIが聞く」と「人が聞いてAIが支える」の違い

  • 企画・リクルート・実施・文字起こし・分析・報告の6工程で、AIが入る場所と人が残る場所

  • 人とAIに同じ調査をさせて比べた研究でわかったこと

  • AIに向くデプスインタビューと、向かないデプスインタビュー

デプスインタビューは、1人60〜90分の対話を、1日に多くても3〜4人まで行う調査です。

対象者ごとに日程を合わせ、聞き終えた記録を分析できる形にするまでに、まとまった時間がかかります。

この時間のかかり方を知っている方ほど、「AIに任せたい」と考えるのではないでしょうか。一方で、AIが人間の代わりに話を聞くと言われても、対象者への深掘り質問や結果の読み取りまで任せてよいのか、判断しにくいかもしれません。

先に結論をお伝えすると、デプスインタビューにおける6つの工程のそれぞれで、AIに任せられる部分と、AIを使っても人が決めるしかない部分がはっきり分かれます。

本記事では、「AIが聞く形」と「人が聞いて、AIが支える形」の違いを分けたうえで、工程ごとにAIが入る場所と人が残る場所、人とAIを同じ条件で比べた研究の結果、AIに向くデプスインタビューと向かないデプスインタビューを、順に見ていきましょう。

「デプスインタビューにAIを使う」には、まったく違う2つの話がある

「デプスインタビュー AI」と調べて出てくる情報には、実は2つの別の話が混ざっています。1つはAIが対象者と直接対話する形で、もう1つは、人がこれまでどおり対話し、AIが記録と分析を助ける形です。この2つは、かかる時間も、向く調査も、人が残る場所もまったく違うため、どちらの話をしているのかを、まず確認しておかなければなりません。

AIが対象者に直接聞く形

AIが直接聞く形では、主に対象者はチャットや音声を通して、AIと1対1で対話します。生成AIの精度が上がったことで、用意された質問を順に投げかけるだけでなく、答えの内容に応じてその場で追加の質問を作り、深掘りまで行うのが現在では一般的です。人のインタビュアーが同席する必要がないので、同じ時間帯に多くの対象者と並行して聞くことができ、記録もその場で文字データとして残ります。

この形は「AIインタビュー」と呼ばれており、全体像と、AIに向く調査・向かない調査の考え方は、別記事「AIインタビューとは?|従来の定性調査との違い・メリットと、AIに向く調査/向かない調査」で詳しく解説しているため、本記事では繰り返しません。

人が聞いて、AIが記録と分析を助ける形

もう1つは、人がこれまでどおりデプスインタビューを行い、文字起こし・要約・発言の整理といった周辺の作業をAIに任せる形です。対話そのものは人が担うので、対象者の表情や間合いを見ながら聞き方を変える、という従来の進め方はそのまま残ります。

質問票やスクリーニング設問のたたき台づくりだけにAIを使い、対象者を決めるところからインタビュー本番、分析までは人だけで進める、という形もその1つです。

AIが聞く形

人が聞いて、AIが支える形

誰が聞くか

AI(その場で追加の質問まで行う)

人のインタビュアー

一度に聞ける人数

数十名〜数百名(同じ時間帯に並行して実施できる)

1日3〜4人

速さ

記録はその場で文字データになる

録音を文字にして確認するまでの待ちが残る

AIが聞く形と、人が聞いてAIが支える形を、2枚のカードで並べて比べた図。副題は「同じ『デプスインタビューにAI』でも、AIが触れる範囲が違います」。左のカードは「AIが聞く形」で、見出しは「対話そのものをAIが担う」。「質問を投げかけるのもAI」「答えに応じた深掘りもAI」「記録はその場で文字データに」を挙げ、結論は「多くの対象者と並行して聞ける」。右のカードは「人が聞いて、AIが支える形」で、見出しは「対話は人が担い、周辺をAIに任せる」。「対話するのは人のインタビュアー」「表情や間合いを見て聞き方を変える」「文字起こしと整理をAIに任せる」を挙げ、結論は「従来の進め方はそのまま残る」。図の下部に「どちらの形でも、目的と結論を決める工程は人に残ります」と添えられている。

6つの工程のうち、AIが入れる工程はどこか

デプスインタビューは、企画、リクルート、インタビューの実施、文字起こし、分析、報告の6つの工程で進みます。それぞれの工程の詳細は、別記事「デプスインタビューとは?正しいやり方と6つの工程から深掘りのコツまで紹介」で手順から深掘りのコツまで扱っているので、ここでは繰り返しません。

工程

AIが担えること

人が残ること

企画

質問票のたたき台づくり

調査の目的と、何を聞くかを決める

リクルート

スクリーニング設問のたたき台づくり

誰に聞くかの条件を決め、対象者を選ぶ

インタビューの実施

対話しながら、その場で深掘りする

聞き方を決め直す

文字起こし

録音を文字データにする

固有名詞や聞き取りにくい箇所の確認

分析

発言の分類、要約、論点の整理

事業の状況に照らした読み取りと、結論

報告

報告書のたたき台づくり

何を伝え、何を判断してもらうかを決める

表を上から見ると、AIが担えるのは「たたき台を作る」「記録を文字にする」「整理する」の3種類に集まっています。一方で、「目的を決める」「誰に聞くかを決める」「結論を出す」といった「決める」工程は、いずれも人の側に残ったままです。

企画とリクルート:たたき台はAI、決めるのは人

企画の工程では、調査の目的と対象者の条件を文章で渡せば、質問票のたたき台はAIが数分で作ります。リクルートの工程でも、対象者の条件を渡せばスクリーニング設問の案が出てくるので、白紙から書き始める時間はほとんど要りません。

ただし、たたき台が速く出ることと、中身が決まることは別の話です。対象者の条件の候補を並べるところまではAIが担えても、その条件で本当によいと決めるところに、AIの入る場所はありません。

実施:AIが聞く形なら同時に、人が聞く形なら支えに回る

インタビューの実施は、2つの形で役割がいちばん大きく変わる工程です。AIが聞く形では、AIが対話と深掘りをそのまま担うため、対象者ごとに日程を合わせて1日3〜4人ずつ会う必要がなくなります。

人が聞く形では、AIは支えに回る位置づけです。たとえば、対話の内容をその場で文字にしながら、まだ聞けていない論点や深掘りの候補を聞き手に示す、といった使い方が考えられます。この場合、聞き方を変えるかどうか、相手の言葉のどこを拾うかは、これまでどおり聞き手の判断です。

文字起こしと分析:人の作業時間がいちばん減る

6つの工程のうち、AIの発達でいちばん人の作業時間が減ったのは文字起こしでしょう。いまは録音をAIに渡して文字にするのが当たり前になり、人が一から打ち直す作業はほとんどなくなりました。

AIが聞く形では対話の記録がそのまま文字データとして残り、人が聞く形でも、録音を自動で文字にすれば、人の作業は固有名詞や聞き取りにくい箇所の確認だけです。

分析の工程では、AIは発言を観点ごとに分類し、要約し、論点を並べるところまでを担います。並んだ論点のどれが事業にとって意味を持つのかを読み取る作業は、人の手に残る部分です。

人とAIに同じ調査をさせて比べた研究

コロンビア大学とペンシルベニア大学の研究チームは、同じ調査を人とAIのどちらが聞き手を務めるかで、結果がどう変わるかを調べました。

参加者317名を3つのグループに無作為に分け、AIが聞き手を務める形で139名、人が聞き手を務める形で24名、あらかじめ決めた質問だけを順に聞く形で154名に実施しています。テーマは窓とドアの住宅リフォームで、金額の大きい買い物について音声で聞き取る、実際の市場調査の場面です。

同じ本数で比べたとき、拾えた顧客の「要望の数」はほとんど同じでした。24本ずつで比べると、AIが聞き手のときは平均111.5、人が聞き手のときは109.0です。

話題ごとに出てきたテーマの数では、AIのほうが多くなりました。あらかじめ用意した一覧のうち1回のインタビューで平均いくつ出たかを数えると、4つの話題のうち3つでAIが上回っています。たとえば購買の道のりでは、AIが7.29、人が6.08でした。答えの深さも話題に寄りますが、AIのほうが深いと呼べる話題もありました。

つまり、1本ずつの中身は人とAIでほとんど変わらず、同じ予算なら本数を増やせるぶん、AIのほうが多くの要望を拾えたことになります。

一方で、話した時間や語数、声に表れる感情の強さは、人が聞き手のときのほうが上でした。このようなポイントが重要となる調査においては、人による調査に軍配が上がると言えそうです。

AIを使っても、人が決めなければならない2つのこと

工程の表で人に残っていた「決める」作業について、なぜAIではなく人が決めるのかを、聞く前と聞いたあとの2つに分けて見ていきます。

「何を聞くか」は、調査の目的からしか決まらない

デプスインタビューで何を聞くかは、調査のあとに何を判断したいのかで決まるものです。たとえば、新しい商品の価格を決めたいのか、既存の商品が使われなくなった理由を知りたいのかで、同じ対象者に対しても、聞く順番も深掘りの向きも変わってきます。

この「何を判断したいのか」は、社内の事情、これまでの調査でわかっていること、次に打つ手の候補といった、質問票の外にある情報から生まれるのが普通です。AIに渡せるのは、そのうち文章にできた部分に限られます。文章にする前の段階で「この調査で本当に知りたいこと」を決める作業は、調査の目的を持っている人にしかできません。

出てきた話をどう読むかは、事業を知っている人にしか決められない

聞いたあとの工程でも、同じ理由で人が残ります。デプスインタビューで集まる発言は、1人ひとりの事情が混ざった具体的な話で、そのうちのどれが自社の判断にとって意味を持つのかは、発言だけを読んでも決まりません。

たとえば、10名のうち2名だけが口にした不満があったとします。この2名が自社のこれから狙いたい層に当たるのなら、残る8名が口にしなかったという事実よりも、この2名の不満のほうが重い意味を持つはずです。発言の重さを決めているのは発言の数ではなく自社の事業の状況であり、AIはその状況を知りません。

AIの活用で大きく変わるのは、対象人数と時間

ここまでの線引きを前提にすると、AIを使って実際に変わるのは、聞ける人数と、報告までの時間の2つに絞られます。

1日3〜4人という上限が外れる

人が聞く形のデプスインタビューでは、1人60〜90分の対話に入れ替えや振り返りの時間が挟まるため、1日に会えるのは多くても3〜4人です。対象者は5〜15名、なかでも10名前後に設定される調査が多く、10名ならインタビュー本番だけで3日前後、日程調整を含めるとさらに幅が出ます。工程ごとの日数の出し方は、別記事「デプスインタビューは何日かかる?企画から報告までの工程別スケジュールと日数の出し方」で扱っているとおりです。

AIが聞く形では、この上限がなくなります。対象者はそれぞれ都合のよい時間に答えるので、対象者が100名であってもほとんど変わりません。むしろ、日程調整にかかる時間なども考えると、圧倒的なスピードで調査が完了します。

文字起こしの待ち時間がなくなる

もう1つ変わるのが、インタビューを終えてから分析に入るまでの待ち時間です。人が聞く形で対象者10名なら、録音は10〜15時間になり、AI文字起こしのサービスを使うとしても、最低でも数時間は必要になります。

AIが聞く形では、対話の記録がその場で文字データになるため、この待ち時間そのものがありません。

文字起こしの時間が減ると費用のどの費目が動くのかは、別記事「デプスインタビューの費用はどれくらいかかる?|6つの内訳と相場、人数を変えても総額を自分で計算できる分け方」で整理した内訳に当てはめて確かめるのが確実です。

工程ごとにAIで何が変わるかを、3つのステップで左から順に示した図。副題は「大きく動くのは、文字起こしの待ち時間です」。ステップ1は「インタビュー本番」で、補足は「人は1日に会える人数に上限がある。AIは同時に実施できる」。ステップ2は「文字起こし」で、補足は「人が聞く形は録音を文字にする待ちが残る。AIが聞く形はその場で文字に」。ステップ3は「分析・報告」で、補足は「どちらの形でも、何をどう読むかを決めるのは人」。図の下部に「本番は人数で日数が増えなくなり、文字起こしは待つ工程そのものがなくなります」と添えられている。

AIに向くデプスインタビュー、向かないデプスインタビュー

ここまでの線引きを、調査を始める前に使える形にまとめると、次の2つの一覧になります。次の項目に多く当てはまるほど、AIが聞く形に向いた調査です。

  • 聞くことがすでに決まっていて、同じ観点で多くの人に聞きたい

  • 報告までの期間が短く、文字起こしを待つ余裕がない

  • 全員分の発言を、人手をかけずに同じ形の記録として残したい

  • 予算が大きくなく、コストを抑えて調査を実施したい

一方、次の項目に当てはまる調査では、人が聞く形を残すほうが確実でしょう。

  • 何を聞くべきかを、これから探す段階にある

  • 表情や間合い、言いよどみが読み取りの手がかりになる

どちらの形を選ぶにしても、目的を決める工程と結論を出す工程は必ず人に残るため、十分な工数を確保しておきましょう。

デプスインタビューをAIで行うなら、AIインタビューサービス「Spark Research」

Spark Research は、アサヒビールや日本たばこ産業(JT) などの大手メーカーも利用する、AIインタビューサービスです。

本記事で見てきたとおり、デプスインタビューには大きな時間と工数がかかります。対象者を増やしたい、報告を早めたいと考えても、対象者の都合もあり、なかなか思い通りにいきません。

Spark Research なら、AIがインタビュアーを務め、対象者はそれぞれの都合のよい時間に答えられます。1日3〜4人という上限も、日程調整の手間もありません。

さらにインタビューの記録は自動で文字データになるので、文字起こしを待たずに、そのまま分析へ進めます。数十名から数百名への一斉実施にも対応しているため、対象者を増やしても日数は大きく変わりません。実際に、大手の調査会社に依頼した場合と比較して、70%以上の費用削減につながった事例もあります。

デプスインタビューの設計から分析までご一緒できますので、下記よりお気軽にお問い合わせください。

デプスインタビューのAI活用は、「できるか」ではなく「どの工程を任せるか」で決めよう

デプスインタビューにAIを使えるかという問いは、「AIが聞く形」と「人が聞いて、AIが支える形」のどちらを指しているのかを分けたうえで、工程ごとに答えが決まるものでした。たたき台づくり、記録、整理はAIに任せられ、何を聞くかと、出てきた話をどう読むかは人に残ります。

次の調査で検討するなら、本文の6つの工程の表に自分の調査を当てはめて、どの工程に時間と人手が集中しているかを確かめるのが最初の一歩です。文字起こしの時間と本番の人数が日程を決めているならAIを使う意味があり、何を聞くかがまだ定まっていないなら、その工程は人の手で進めましょう。

よくある質問

AIインタビューとデプスインタビューは、別のものですか。

デプスインタビューは「1対1で深く聞く」という調査の手法の名前で、AIインタビューは「AIが聞き手を務める」という実施の形の名前です。両者は対立する言葉ではなく、デプスインタビューをAIが聞く形で行う、という組み合わせがAIインタビューにあたります。

AIが聞いた場合、深掘りはどこまでできますか。

答えの内容に応じて、その場で追加の質問を作るところまでは行える仕組みです。本記事で紹介した研究では、同じ本数で比べたときに拾えた顧客の要望の数が、人が聞いた場合とほとんど同じでした。一方、何を深掘りすべきかの方針は事前に設計に書き込んでおく必要があり、その設計を決めるのは人です。

文字起こしだけAIに任せることもできますか。

できます。人が聞く形のまま、録音を自動で文字にする使い方がそれにあたり、6つの工程のうち最も時間の減り幅が大きいのがこの工程です。固有名詞や聞き取りにくい箇所の確認は人が行う前提で、確認の時間だけを見込んでおくと計画が組みやすくなります。

AIを使うと、費用はどれくらい変わりますか。

調査の人数と、どこまでを任せるかで変わるため、決まった答えはありません。従来のデプスインタビューの費用は、人数で動かない固定費と、1人増えるごとに増える費用に分けて概算できるので、どの費目がAIで減るのかはその分け方で見ると判断しやすくなります。費用の内訳と相場は、別記事「デプスインタビューの費用はどれくらいかかる?|6つの内訳と相場、人数を変えても総額を自分で計算できる分け方」で扱っているとおりです。

参考文献

  • Deng, Y., Liu, J., Toubia, O., & Jain, N. (2026). AI-moderated interviews for market research and digital twins calibration. arXiv preprint arXiv:2609.29143.

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