

この記事でわかること
グループインタビュー(FGI)の標準的な形と、呼び方の整理
デプスインタビューとの違いと、どちらを選ぶかの目安
「グループでは本音が出ない」という定説を、無作為化した実験で検証した結果
1グループあたりの費用と、企画から報告までの工程別の期間
グループインタビュー(FGI)は、条件に合う対象者を複数人集め、司会者の進行のもとで座談会形式で話を聞く定性調査の手法です。新商品のコンセプト評価や広告の受け止め方の確認など、消費者の生の声が必要な場面で広く使われています。
顧客ニーズを把握する上では非常に有効な手法ですが、いざ検討を始めると、「デプスインタビューとどちらを選ぶべきか」「費用と期間はどれくらい見込めばよいのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。さらに調べていくと、「グループでは深掘りができない」「同調圧力で本音が出にくい」といった注意点は目にする一方で、その根拠まで示した解説はほとんど見当たりません。
結論を先にお伝えすると、グループインタビューの価値は「他の参加者がいること」そのものにあります。
本記事では、グループインタビューの標準的な形とデプスインタビューとの使い分け、1グループあたりの費用と工程別の期間の目安、そして「本音が出ない」という定説を検証した実験の結果まで、詳細に解説します。
まず「グループインタビュー」「フォーカスグループインタビュー」「FGI」は、いずれも同じ手法を指す呼び方です。調査会社によって表記が分かれることもありますが、中身はどれも、複数人の対象者を集めて座談会形式で話を聞く定性調査を指しています。FGIは「フォーカスグループインタビュー(Focus Group Interview)」の頭文字を取った略称です。
本記事では、以降「グループインタビュー」に表記を統一して解説を進めます。
標準的な実施の形は、1グループあたり4〜6名の対象者を集め、モデレーター(司会者)の進行で90〜120分かけて話を聞くというものです。
ただし、調査会社各社が公開している情報を見比べると、人数は3〜12名、時間は60〜150分と幅があります。テーマの複雑さや、1人あたりにどれだけ発言時間を確保したいかによって、この範囲で調整されると考えるとよいでしょう。
もうひとつの前提は、グループを1つで終わらせないことです。グループの間で意見の違いを見比べることに意味があるため、最低でも2グループ実施するのが基本とされています。
なお、グループインタビューはあくまで定性調査なので、何名で実施しても「何%の人がそう思うか」という量的な結論までは導けません。
デプスインタビューは、聞き手と対象者が1対1で行う定性インタビューのことです。グループインタビューとの違いは細かく挙げればいくつもありますが、手法選びで見るべきポイントは「他の参加者がいるかどうか」という一点に集約できます。
他の参加者がいることで変わるのは、まず発言の生まれ方です。座談会では、他の参加者の発言が呼び水になり、1人で聞かれただけでは思い出さなかった経験や、自分でも意識していなかった不満が引き出されることがあります。発言の内容だけでなく、他の参加者の意見にうなずくのか、首をかしげるのかといったその場の反応も、賛否の温度感を読み取る材料です。
時間の使い方も対照的で、たとえば6人に話を聞く場合、デプスインタビューなら1人1時間として合計6時間かかりますが、グループインタビューなら1時間30分の1回で済みます。そのぶん1人あたりの発言時間は短くなるため、1つのテーマを掘り下げる深さでは1対1に及びません。
選び分けの軸になるのは、「意見の幅」を取るか「1人の深さ」を取るかです。新しいコンセプトに対する反応の幅を短時間でつかみたい、属性の違うグループで受け止め方を見比べたいという目的なら、グループインタビューが向いています。一方、購入に至るまでの意思決定の流れや、生活背景まで含めた1人の事情をじっくり追いたいなら、デプスインタビューが候補になるでしょう。
おおまかにいえば、「どう受け止められるか」という対象者の幅を集めるならグループ、「なぜそうしたのか」を深く聞くなら1対1が目安です。ただし、この使い分けは経験則として語られることが多く、根拠となるデータが添えられる機会はまれといえます。
グループインタビューのデメリットとしてよく挙げられるのは、「深掘りできない」「同調圧力で本音が出にくい」「パーソナルなテーマには不向き」という3点です。ただ、こうした定説を裏づけるデータは、ほとんどありません。
ある比較実験では、参加者350人を、フォーカスグループ(座談会)で話を聞く人たちと、個別インタビューで話を聞く人たちに、無作為に振り分けました。
どちらにも、医療機関の受診行動という同じテーマについて、同じ自由回答の質問を投げかけています。参加者を無作為に振り分けているため、集まった人の偏りではなく、「座談会か1対1か」という聞き方の違いそのものの影響を比べられる設計です。
比較された点は2つあります。1つは、思いつくままに挙げてもらった話題の一つひとつを「項目」として数えたとき、項目がいくつ挙がったかという点です。もう1つは、個人的でセンシティブな事柄がどれだけ打ち明けられたかという点でした。
まず、数人が参加する座談会1回と、1人に聞く個別インタビュー1回を、それぞれ「1回」と数えて比べると、挙がった項目の数は両方式でほぼ同じだったと報告されています。
つまり、参加者1人あたりで比べると、個別インタビューのほうが幅広い項目を引き出していました。これは、参加者1人からどれだけ幅広い項目を引き出せるかという物差しであって、時間の効率とは別の話です。先ほど紹介した「6人に聞くなら座談会は1時間30分で済む」という時間あたりの有利さは、この結果によって変わりません。
この結果を踏まえると、目的が「幅広い項目の洗い出し」であれば、無理にグループを組むより、個別インタビューの人数を増やすほうが理にかなっているといえそうです。ただし、時間効率は明らかにグループインタビューに利があるため、最終的には予算やスケジュールなどを鑑みた決断が必要となります。
また、センシティブな話題は、むしろグループのほうが語られやすく、グループの場でしか出てこなかった内容もあったと報告されています。仮説をこれから探す探索型の調査では、この「グループの場だからこそ語られることがある」という特性が生きる場面もあるでしょう。
この実験の題材は医療機関の受診行動ですが、「複数人の場で話すか、1対1で話すか」が人の話し方をどう変えるかを検証したものなので、テーマの違うマーケティングリサーチでも手法選びの参考にできます。
最初の工程は、調査目的の明確化と対象者条件の設定です。「誰に・何を聞けば・何を決められるのか」を先に固めておかないと、当日の話題が発散してしまい、結果を意思決定に使えなくなってしまいます。
たとえば「20〜30代の利用者が、パッケージ案AとBのどちらを手に取りたくなるかを確かめて、来月の会議で案を絞り込む」のように、結論の使い道まで含めて言葉にしておくことが重要になります。
目的の次に用意するのが、当日の進行表にあたる「インタビューフロー」です。90〜120分の枠に対して、緊張をほぐす導入から本題、最後のまとめまで、話題の順番と時間配分を書き出していきます。聞きたいことを全部並べるのではなく、調査目的に直結する話題へ時間を厚く配分するのが、設計の要点です。
続くリクルーティングでは、調査パネルへのアンケート配信などを通じて、条件に合う対象者を絞り込んで集めます。このとき考えどころになるのが、グループの組み方です。グループの中では年代や利用経験といった属性をそろえ、グループの間で属性を変えるのが基本の組み方になります。属性の近い人どうしのほうが互いに発言しやすく、少数派になった参加者が口をつぐんでしまう事態も避けやすいためです。
たとえばある食品の調査なら、「週1回以上買う人」のグループと「以前は買っていたが今は買わない人」のグループに分ければ、継続の理由と離反の理由をグループ間の比較から読み取れるでしょう。
当日の進行は、モデレーター(司会者)が担います。進行の要点は、発言が特定の参加者に偏らないように話を振ることと、冒頭で「ここに正解はありません」と伝えて話しやすい空気をつくることの2つです。こうした進行の技量に発言の質が左右されやすい点は、この手法の弱点でもあります。
実施の直後には、インタビューを観覧していた関係者で気づきを出し合う振り返り(デブリーフィング)の場を設けるとよいでしょう。記憶が新しいうちに「どの発言が重要だったか」の目線をそろえておくと、その後の分析の手戻りを減らせるためです。
最後の分析と報告書の作成では、発言をそのまま並べるのではなく、グループ間で共通した意見と割れた意見を整理して、調査目的への答えに落とし込みます。
実施の判断には、費用と期間の見通しが欠かせません。
費用の相場は、1グループあたり20〜60万円が目安です。この金額は、1グループ5〜6名・1回2時間で実施する場合を前提としています。先ほど手法として取りうる幅は3〜12名・60〜150分と紹介しましたが、それはあくまで設計の選択肢の話で、費用を見積もる段階では、この「5〜6名・2時間」という代表的な実施パターンを前提に置くのが実務的です。
ただし、実際の総額はグループ数との単純な掛け算では決まりません。グループ数を増やしても、企画・設計や分析にかかる費用はほぼ1回分のまま総額に加算されるため、総額はグループ数に比例しては増えないのです。
総額の組み立て方や内訳の考え方は、別記事「定性調査の費用はいくら?手法別の相場と「人数を半分にしても半額にならない」理由」で詳しく解説しています。
期間は、リクルーティング調査票(条件に合う対象者を絞り込むアンケート)の確定に約1週間、リクルーティングに約1〜2週間、実施後の報告書作成に約2週間で、企画の開始から報告まで全体で1か月強が目安です。実務においてはバッファを含めて、2か月程度は見ておきましょう。

見落とされがちですが、当日のインタビュー自体は2時間ほどで終わり、その前後の工程が期間の大半を占めます。特にリクルーティングは、条件に合う人を探し、参加の承諾を取り、日程を確定させるところまでを含む、時間のかかりやすい工程です。しかも参加者全員が同じ日時に同じ場所へそろう必要があるため、デプスインタビューのように1人ずつ日程を調整するわけにはいきません。
裏を返せば、調査結果を使いたい会議の日程が決まっているなら、その1か月強〜2ヶ月前が企画着手の締め切りだということです。まずは報告書が必要な日から逆算して、リクルーティング調査票をいつまでに確定させるかをスケジュール表に書き込むところから始めましょう。
最後に確認したいのは、「そもそも人を集める必要があるのか」という一歩手前の問いです。グループインタビューを検討する目的は、大きく2つに分かれます。1つは参加者どうしのやりとりから、1人では出てこない気づきが生まれることを期待する場合、もう1つは短時間で多くの人の意見を集めたい場合です。
前者であれば、他の参加者の存在そのものが価値なので、グループインタビューという形式に代えは利きません。一方、後者の「多くの人の意見を集めたい」が主な目的なら、グループインタビューである必要はないというのが、ここまでの内容から導ける結論です。先ほどの実験が示したとおり、1人あたりで見れば、デプスインタビューのほうが幅広い項目を引き出していました。
しかしデプスインタビューのこれまでの課題は、個別インタビューを人数分だけ繰り返すための手間と時間でした。この点は近年、回答者に対してAIが1対1でインタビューを行う手法が登場したことで、状況が変わりつつあります。
人が1人ずつ日程を組んで聞いていく代わりに、多くの人数への個別インタビューを同時に進められるため、「多くの人の意見を短時間で集める」という目的を、人を集めずに果たせるようになってきました。
Spark Research は、アサヒビールや日本たばこ産業(JT) などの大手メーカーも利用する、AIインタビューサービスです。
これまではグループインタビューやデプスインタビューといった定性的な調査手法を通して「もっと多くの人の声を聞きたい」と思っても、予算と期間の制約から、対象者の合計は現実的に20名程度が上限になりがちでした。
Spark Research なら、AIがモデレートを行うインタビューを、数十名から数百名の規模で一斉に実施できます。上限の前提そのものが変わるため、グループインタビューに期待していた「多くの人の意見を短時間で集める」という目的に、人数の規模で応えられるのが特長です。
グループインタビューをはじめとする定性調査の設計から分析までご一緒できますので、下記よりお気軽にお問い合わせください。
グループインタビューの強みは、他の参加者がいるからこそ生まれる発言にあります。その強みが調査の目的に合うなら、1グループ4〜6名×最低2グループ、費用は1グループ20〜60万円、期間は1か月強という目安で計画を立ててみてください。
目的が「多くの人の意見を幅広く集めること」にあるなら、人を集めない方法も含めて、手法の比較・検討から始めましょう。
1グループあたり4〜6名が標準です。各社の公開情報では3〜12名と幅があり、テーマの複雑さや確保したい発言時間に応じて調整されています。
基本は最低2グループです。グループの間で意見の違いを見比べることに意味がある手法のため、1グループだけでは比較の軸が持てません。
1グループあたり20〜60万円が目安です。1グループ5〜6名・1回2時間の実施を前提とした金額で、総額の考え方は別記事「定性調査の費用はいくら?」で詳しく解説しています。
「どう受け止められるか」の幅を集めたいならグループインタビュー、「なぜそうしたのか」を1人に深く聞きたいならデプスインタビューが目安です。ただし、1人あたりで引き出せる項目の幅は個別インタビューのほうが広かったという実験結果もあるため、意見の幅の洗い出しが目的なら、個別インタビューの人数を増やす選択肢も検討できます。
参考文献
Guest, G., Namey, E., Taylor, J., Eley, N., & McKenna, K. (2017). Comparing focus groups and individual interviews: findings from a randomized study. International Journal of Social Research Methodology, 20(6), 693–708.
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