

この記事でわかること
ユーザーインタビューの質問を組み立てる5つのパートと、その順番
パートごとの質問例と、それぞれの問いが引き出すもの
質問の言葉づかいが答えに与える影響について、研究からわかっていること
避けたい質問の型と、当日に質問票にない話が出たときの進め方
ユーザーインタビューは、対象者に質問を重ねながら、行動や考えの背景を聞き取る調査手法です。その成果は、当日の話術よりも、事前に用意する質問項目の設計で大きく決まります。
質問例のリストを集めるところまでは、難しくありません。しかし、いざ自分の調査票を作る段になると、どの問いを、どの順で、いくつ置けばよいのかが決まらず、手が止まってしまう方も多いのではないでしょうか。
本記事では、調査担当者が対象者に聞く質問に絞って、質問項目の組み立て方と目的別の質問例、そして聞き方が答えを変える理由を解説します。
質問項目は、一問ずつばらばらに考えるのではなく、聞く目的ごとに5つのパートに分けて組み立てます。パートごとに引き出すものが決まっていれば、質問票を作っている途中で、抜けている観点に気づけるからです。
5つのパートと、それぞれで引き出すものを一覧にまとめました。
パート | 聞くこと | ここで引き出すもの |
|---|---|---|
①ウォーミングアップ | 自己紹介や、テーマに関わる普段の暮らし・仕事 | 話しやすい空気と、後の話を解釈するための背景情報 |
②普段の行動 | テーマに関して実際にとった行動と、そのときの場面 | 意見ではなく、実際に起きたこと |
③困りごと | 行動の中でつまずいた場面、あきらめた場面 | 対象者自身も言葉にしていない不満や我慢 |
④いま使っているもの・代わりの手段 | 現在の解決手段と、その選び方 | 比較の基準と、乗り換えが起きる条件 |
⑤締め | 言い残したことと、全体を振り返った感想 | 質問票の外にある気づき |
どのテーマの調査でも、この骨組み自体は変わりません。それぞれのパートの中に置く個別の問いがそれぞれ異なってくるのです。
5つのパートは、並べる順番にも意味があります。原則は、行動を先に聞き、評価や意見をあとに聞くことです。
たとえば、冒頭で「このサービスに満足していますか」と評価から聞くと、対象者はいったん「満足している」と口にした手前、続く行動の話でも、その答えと食い違わないように行動についての話を選びやすくなります。
先に事実としての行動を聞いておけば、評価を聞く段階でも、具体的な場面に根ざした言葉が返ってきやすいはずです。順番がなぜそこまで答えを左右するのかは、後半の研究の節でもあらためて説明します。

ここからは、パートごとの質問例の一覧です。一覧のまま順に読み上げるのではなく、それぞれの問いが何を引き出すためのものかを確かめて、自分の調査の目的に合うものを選んでください。
最初のパートでは、答えやすい事実から入って場をほぐし、続けて普段の行動を過去の事実として聞いていく流れです。
質問例 | この問いで引き出すもの |
|---|---|
「まず、普段のお仕事の内容を簡単に教えていただけますか。」 | 対象者の仕事の背景。後の話を解釈する土台になる情報 |
「お休みの日は、普段どんなふうに過ごしていますか。」 | 生活の背景。テーマの外にある関心や時間の使い方 |
「○○は、普段どんな場面で使っていますか。」 | 利用の文脈。生活や仕事のどこに組み込まれているか |
「最初に○○を知ったきっかけは何でしたか。」 | 認知の経路。出会いの場面と情報源 |
「最近○○を使ったときのことを、順を追って教えてください。」 | 意見ではなく、実際に起きた行動の記録 |
「そのときは、何がきっかけで使い始めたのですか。」 | 行動の起点。習慣なのか、外からの刺激なのか |
「使うかどうかを決めるとき、誰かに相談しましたか。」 | 意思決定に関わった人。本人以外の影響の有無 |
「使う前に、何か調べたり、ほかのものと比べたりしましたか。」 | 情報収集の有無と経路。行動の入り口で何を頼りにしたか |
「そのとき、その場にはほかにどなたかいましたか。その方は何をしていましたか。」 | 行動の周りにいる人。一緒に使う相手や、行動を見ている人 |
「使い終わったあとには、何をしましたか。」 | 行動の前後関係。その行動に続いて何が起きているか |
「○○を使うとき、決まってやっている手順があれば教えてください。」 | 習慣化した型。本人が意識していない工夫やこだわり |
「○○と一緒に使っているものがあれば教えてください。」 | 周辺の道具やサービス。行動を支えている組み合わせ |
「その使い方は、いつ頃から続いていますか。」 | 行動の定着度。最近の変化か、長年の習慣か |
「以前は、同じことをどうやっていましたか。」 | いまのやり方に落ち着くまでの変遷 |
「○○を使わない日は、代わりに何をしていますか。」 | 使う場面と使わない場面を分けている条件 |
「平日と休日とで、○○の使い方は変わりますか。どんなふうに違いますか。」 | 場面による使い分け。行動が切り替わる条件 |
「○○のことを、誰かに話したことはありますか。どんな話をしましたか。」 | 推奨や共有の行動。人に話すとき、本人が取り上げる良さ |
困りごとなどネガティブな回答を求める質問は、バイアスがかかりやすく、「不満はありますか」と正面から聞いても、なかなか出てきません。うまくいかなかった具体的な場面を思い出してもらう聞き方で、少しずつ引き出していきます。
質問例 | この問いで引き出すもの |
|---|---|
「○○を使っていて、思いどおりにいかなかった場面があれば教えてください。」 | 本人が「不満」と呼んでいない、小さなつまずき |
「そのとき、その場でどう対処しましたか。」 | 自力の回避策。困りごとの裏返しになっている工夫 |
「いちばん最近困ったのはいつですか。そのとき何をしていましたか。」 | 困りごとの頻度と鮮度。記憶が新しいうちの具体的な場面 |
「途中で使うのをやめてしまったことはありますか。そのときの状況を教えてください。」 | 離脱の瞬間と、その引き金になった出来事 |
「初めて使ったとき、戸惑ったのはどんなところでしたか。」 | 導入時のつまずき。慣れる前に離脱が起きやすい箇所 |
「○○を使う中で、いちばん時間がかかっているのはどの作業ですか。」 | 負担の所在。省きたいと思われている工程 |
「その困りごとは、放っておくとどうなりますか。」 | 深刻さの度合い。我慢できる不便か、放置できない問題か |
「同じ場面で、周りの方はどうしているか聞いたことはありますか。」 | 個人の問題か、広く共通する問題か |
「不便だと感じながらも、我慢して続けている点があれば教えてください。」 | 表に出てこない不満。いずれ乗り換えのきっかけになりうるもの |
「解決するのを諦めて、そのままにしていることはありますか。どんなことですか。」 | 放置された困りごと。本人が解決できると思っていない領域 |
「その困りごとがあるせいで、やめたり控えたりしていることはありますか。」 | 困りごとの波及範囲。行動が制限されている領域 |
「うまくいったときと、いかなかったときとでは、何が違いましたか。」 | 成否を分けている条件。本人なりの成功パターン |
「いまは、その困りごとをどうやってしのいでいますか。」 | 現在の代わりの手段。商品やサービスに限らない、自己流のしのぎ方 |
「いまのやり方は、どうやって見つけましたか。」 | 情報の入手経路。何を頼りに解決策を探すか |
「ほかの方法と比べて選んだのですか。そのときは何を比べましたか。」 | 比較の基準。選ばれる条件と、候補から外れる条件 |
「いまのやり方の、ここは手放せないという点はどこですか。」 | 乗り換えの障壁。別のやり方に移るときに失いたくないもの |
「いまのやり方に決める前に、試してやめたものがあれば教えてください。」 | 選ばれなかった選択肢と、その理由 |
「その困りごとを、誰かに相談したことはありますか。」 | 解決を探す行動の有無。相談する相手と経路 |
「その作業を、誰かに代わりにやってもらったことはありますか。」 | 人に頼るという解決手段。代行へのニーズ |
「困ったとき、まず何を見たり調べたりしますか。」 | トラブル時の情報行動。頼りにされている情報源 |
「過去にやり方を変えたときは、何がきっかけでしたか。」 | 実際に乗り換えが起きたときの、具体的なきっかけ |
締めのパートは、聞き漏らしの回収と、質問票の外にある話を拾うための時間です。
質問例 | この問いで引き出すもの |
|---|---|
「今日お聞きした中で、言い足りなかったことはありますか。」 | 質問票が拾えなかった論点 |
「反対に、聞かれると思っていたのに聞かれなかったことはありますか。」 | 対象者から見た、調査側の盲点 |
「今日話してみて、ご自身で意外だった点はありますか。」 | 対象者本人も言葉にしていなかった気づき |
「話しながら思い出したものの、口にしなかったことはありますか。」 | 途中で流れた話題。遠慮の奥にある本音 |
「今日お話しくださったことは、これまで誰かに話したことがありましたか。」 | その話が、今日初めて言葉にされたものかどうか |
「今日の話の中で、いちばん伝えたかったのはどの部分ですか。」 | 対象者がいちばん重く見ている論点。話の優先順位 |
「同じテーマなら、ほかにどんな人の話を聞くとよいと思いますか。」 | 対象者の周りにいる別のタイプ。次の調査対象のヒント |
「答えるのが難しかった質問はありましたか。それはどれですか。」 | 質問票の弱点。次の調査に持ち帰る改善の材料 |
「今日のテーマについて、最近気になっていることがあれば教えてください。」 | 質問票の枠の外にある関心。次の調査の仮説の種 |
「今日の話を一言でまとめると、どうなりますか。」 | 対象者自身による要約。本人が核だと感じている部分 |
ここまでの質問例が繰り返し「過去の具体的な場面」を聞いているのには、理由があります。質問に使う言葉そのものが、返ってくる答えを動かすからです。
その様子を数値で示した実験として、ワシントン大学の研究チームが行った実験を紹介します。先に断っておくと、これは交通事故の映像を見た人の記憶を調べた実験であって、ユーザーインタビューを対象にした研究ではありません。それでも、「聞き方が答えを変える」という筋道を確かめるうえで、非常に興味深い報告です。
ひとつめの実験の参加者は、交通事故の映像を見た学生45名でした。映像のあとに「2台の車が______したとき、どれくらいの速さで走っていましたか」と質問し、空欄の動詞だけを「激突した」「衝突した」「ぶつかった」「当たった」「接触した」の5つに振り分けました。つまり45名は、聞かれる動詞ごとに5つのグループへ分かれていたわけです。
同じ映像を見ているのに、グループごとに平均した走行する車の速度の推定結果は「提示した動詞」によって変わり、最も強い「激突した」のグループでは時速40.8マイル(約時速66km)、最も弱い「接触した」のグループでは時速31.8マイル(約時速51km)だったと報告されています。
この研究には続きがあり、今度は学生150名を3つのグループに分け、同じように事故の映像を見せたあと、あるグループには「激突した」、別のグループには「当たった」という動詞で速さを質問し、残りのグループには速さを聞きませんでした。
1週間後、全員に「先日見せた映像の中で、割れたガラスを見ましたか」とたずねました。実際には、映像に割れたガラスは映っていません。
それでも、「激突した」と聞かれていた50名では16名が「割れたガラスを見た」と答えてしまいました。「当たった」の50名では7名、速さを聞かれなかった50名では6名だったと報告されており、1週間前の質問の動詞ひとつで、その場の答え方だけでなく、人間の記憶そのものが変わりうることを示した結果です。
「誘導的な質問を避ける」という助言は、どのインタビュー入門にも書かれています。この実験を踏まえると、それは「その場の答えが少し歪む」だけの話ではなさそうです。問いに含めた言葉は、対象者がその出来事をどう記憶するかにまで影響しかねません。
同じことは、1回のインタビューの中でも起こりえます。前半の問いに使った言葉の与える印象が、後半の答えまで同じ方向へ引っ張ってしまうことがあるからです。
こういった人間のバイアスを抑えるために、評価ではなく事実の行動から聞き始めるといった原則は必ず守るようにしましょう。
上記の質問例を実際の調査向けに言い換えていく段階で、はまりやすいのが次の3つの型です。3つの型は、問いへの答えは返ってくるのに、知りたかった中身が手元に残らないという点で共通しています。
「この機能があったら使いますか」と聞かれると、対象者は相手の期待に応えようとして、実際よりも前向きな答えを返しがちです。
未来の自分の行動は、本人にも正確には予測できません。聞きたいのが購入の条件なら、「前回○○を買ったとき、最後まで迷ったのはどんな点でしたか」のように、実際に起きた過去の行動に置き換えて聞くようにしてください。
「この商品の使いやすさとデザインはどうでしたか」と聞かれた対象者は、答えやすいほうにだけ答えてしまいます。また、聞き手の側も、返ってきた言葉がどちらへの評価なのかを分けられなくなってしまうため、問いはひとつずつに分割するようにしてください。
はい・いいえで答えられる問いそのものは、避ける必要はありません。「途中でやめてしまったことはありますか」と事実の有無を確かめてから、「そのときの状況を教えてください」と中身を聞いていく組み方は、深掘りの入り口としてよく使われています。本記事の質問例の表に、はい・いいえで答えられる問いが交じっているのも、この使い方を前提にしているためです。
しかし、「○○に満足していますか」のように意見や評価をはい・いいえで答えられる形で聞いて、すぐに次の質問へ進んでしまうことは避けるようにしてください。「はい」のひとことからは、満足の中身も、その理由も読み取れません。
はい・いいえで答える質問のあとは、必ずその理由を深ぼる質問をセットにしてください。

質問例を組み上げれば、質問票の形はいったん完成です。ただし、当日のインタビューが質問票のとおりに進むことは、まずありません。予想していなかった話が出たら、書いてある質問はいったん後回しにして、その話を追いかけるほうが、調査としては実りが大きいこともあるからです。
用意した問いをすべて聞き切ることを、当日の目標にしないでください。時間が押したときにどの問いを落とすかは、その場で判断するのではなく、質問票を作る段階で決めておきましょう。
深掘りで話が延び、残り時間が迫っているときに落ち着いていられるかどうかは、落とせる問いを先に決めてあるかで決まります。
書きあがった質問票は、対象者に会う前に一度、声に出して読んでみてください。目で読んで自然な文と、口に出して聞きやすい文は、同じではありません。読み上げてみると、一文が長すぎる問いや、2つのことを同時に聞いている問いに、その場で気づけます。
Spark Research は、アサヒビールや日本たばこ産業(JT) などの大手メーカーも利用する、AIインタビューサービスです。
ここまで見てきたとおり、質問票づくりの中心は、5つのパートに沿って問いを組み、聞き方の言葉まで一つずつ整えていく作業でした。原則どおりに進めても、「この聞き方で答えを誘導していないか」という不安は最後まで残りやすいものです。
Spark Research には、調査の概要を入力すると調査設計の案を生成する調査設計支援AIが組み込まれています。質問項目もAIと壁打ちしながら作成・調整できるため、パートの組み立てや聞き方の言い換えに迷ったとき、たたき台づくりからAIの支援を受けられるのが特長です。
ユーザーインタビューの質問の設計から分析までご一緒できますので、下記よりお気軽にお問い合わせください。
質問例のリストは、そのまま使う完成品ではなく、5つのパートに沿って並べ直すための部品にすぎません。そして、どの問いを選ぶかと同じくらい、どんな言葉で聞くかが答えを左右します。
まずは手元の質問案を5つのパートの順に並べ替え、「必ず聞くこと」に印を付けるところから始めてみてください。
対象者が話す量や持ち時間によって変わるため、一律の目安は示せません。数をそろえるよりも、目的に直結する「必ず聞くこと」を決めたうえで、残りの問いは当日落とせるようにしておくほうが確実です。
原則として、そのまま渡す必要はありません。事前に全文を見せると、対象者が答えを準備してしまい、その場で思い出しながら話す生の言葉が出にくくなります。当日の流れやテーマの範囲を伝える程度にとどめるのが無難です。
深掘りに「なぜ」は欠かせませんが、同じ形で繰り返すと問い詰める響きが出てきます。「そのとき、何が決め手でしたか」「どんな場面でそう感じましたか」のように、聞きたい「なぜ」を場面の質問に言い換えると、対象者は答えやすくなるはずです。
5つのパートの骨組みは、BtoBでもそのまま使えます。違いが出るのは中身のほうで、購買や導入の決定には複数の関係者がからむため、「その決定には、ほかにどなたが関わりましたか」のように、組織の中の役割を聞く問いを、②「普段の行動」や④「いま使っているもの・代わりの手段」のパートに足しておくと確実です。
参考文献
Loftus, E. F., & Palmer, J. C. (1974). Reconstruction of Automobile Destruction: An Example of the Interaction Between Language and Memory. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 13, 585–589.
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