

この記事でわかること
スクリーニング調査の位置づけと、設問数の相場
対象者の条件を設問に翻訳し、限られた設問数に収める手順
設問の聞き方が、該当する人の数に与える影響
配信数のもとになる出現率の仮置きの仕方と、仮置きを外したときに起きること
スクリーニング調査とは、本番のインタビューやアンケート(本調査)の前に行う、条件に当てはまる人を事前アンケートでふるい分ける工程を指します。
「30代で、直近1年以内に住宅ローンを契約した人」のように、対象者の条件そのものは決まっている場合、その条件をどのようなアンケートに落とし込むか、悩む方も多いのではないでしょうか。
結論から先にお伝えすると、スクリーナー(スクリーニング調査票)の出来は、必須条件を漏れなく設問に落とし込めたかと、それらの設問の聞き方で決まります。設問の中身が同じでも、聞き方しだいで「該当する」と答える人の数が変わることもあるためです。
本記事では、対象者の条件を設問に落とし込むための手順と、該当者の数まで左右する設問の聞き方、そして配信数のもとになる出現率の考え方を解説します。
スクリーニング調査とは、本調査の前に、条件に当てはまる対象者を選び出すための事前調査です。「事前調査」「予備調査」とも呼ばれ、調査票のことは「スクリーナー」と呼ばれます。
わざわざ2段階に分けるのは、本調査が1人あたりの謝礼も実施の手間も大きい調査だからです。条件に該当しない人にまで本調査を配ると、その分の費用と時間が大きな負担となります。そこで、短い事前アンケートを広い範囲に配って該当者をふるい分け、通過した人だけに本調査を実施するという方法が通例となっています。
そのため、スクリーニング調査の役割は、本調査にかける費用と時間を、条件に該当する人だけに集中させることにあります。
設問数の相場は「基礎条件についての質問を除いて5問以内」が理想とされ、多くても10問程度に絞る必要があります。
対象者の条件は、箇条書きのままでは設問になりません。「30代」「首都圏在住」「直近1年以内に住宅ローンを契約」「世帯年収が一定以上」「金融リテラシーが高い」のように、書き出してみると条件が5個や6個になるのは珍しくないはずです。2つの手順でほどいていきます。
最初の作業は、条件の一つひとつに「外せない条件か、あれば望ましいだけの条件か」の印をつけることです。必須の条件とは、それを満たさない人に話を聞いても、調査の目的が果たせなくなるものを指します。先ほどの例でいえば、住宅ローンの利用実態を聞く調査なら「直近1年以内に住宅ローンを契約した」は必須にあたるでしょう。一方の「金融リテラシーが高い」は、当てはまればなお良いという程度の、望ましい条件にとどまります。迷ったときは、「この条件を外しても、この調査は成立するか」を自問してみてください。
スクリーナーの設問に翻訳するのは、原則として必須の条件だけです。望ましい条件まで通過の条件に加えると、その分該当者が減り、必要な配信数が膨らんでしまいます。
必須の条件だけに絞っても、なお相場の設問数に収まらない場合があるはずです。対象者が集まらなければインタビュー自体を実施できないため、そういった場合は「スクリーナーで絞る」のをやめて「本調査で聞く」形に切り替えます。
設問からあふれた条件は捨てるのではなく、本調査の設問として聞いておき、分析の段階で回答者を分けるために使います。たとえば「金融リテラシーが高い人の反応を重点的に見たい」のであれば、本調査でリテラシーを測る設問を本調査内に入れておき、集計のときに高い群と低い群を分ければ、「金融リテラシー」という条件を手放したことにはなりません。
設問の中身が決まったら、もうひとつ確かめておきたいのが聞き方です。じつは、同じ条件を確かめる設問でも、聞き方の形式によって「該当する」と答える人の数は大きく変わります。
例えば、聞き方として悪いのは下記のような設問です。
あなたは一都三県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)に居住していますか?
1. はい
2. いいえ
ご覧いただくとわかる通り、上記の設問はスクリーニングの条件が透けて見えてしまっています。アンケートの回答に慣れている人の中には、「できるだけスクリーナーを通過し、調査に参加して多くの謝礼を得たい」と考えている人も一部存在しているため、このような質問はスクリーナーを通過する該当者数を増やしてしまう傾向にあるのです。
上記の例のように、一都三県に居住していることを対象条件としたい場合は、必ず居住地域を47都道府県から選ばせるようにしましょう。他の質問に関しても同様に、スクリーニングの条件や意図が透けて見えないことを意識して設問を作成してください。
スクリーナーの形が決まったら次に決めるのは、何人に配るかという配信数で、その計算に必ず出てくるのが「出現率」です。
配信数は、「本調査の必要人数 ÷ 本調査の回答率 ÷ 出現率」という式で見積もります。本調査の回答率で先に割るのは、スクリーニングを通過した人の全員が本調査に答えてくれるわけではないためです。出現率とは、スクリーニング調査の回答者のうち、条件に該当して通過する人の割合を指します。
たとえば本調査で400人の回答が必要で、本調査の回答率を70%と見込むなら、招待が必要なのは 400 ÷ 70% = 約571人です。出現率を20%と見込むなら、スクリーニング調査の配信は 571 ÷ 20% = 約2,855人に必要になります。さらに、回答の途中離脱などを見込んで、配信数には1.1〜1.3倍の安全率をかけておくのが一般的です。
問題は、この式の分母に入る出現率を、調査に着手する前には誰も知らない、という点にあります。似た条件で調査をした実績があればその値を使えますが、初めての条件では仮置きするしかありません。
そのときに、根拠のない一つの数字を置くのではなく、条件ごとの該当率を見立てて掛け合わせるのが仮置きの基本形です。
条件は1つ増えるごとに掛け算で効いてくるため、該当者は足し算ではなく、掛け算のペースで減っていきます。たとえば、必須の条件が3つあり、それぞれの該当率を仮に50%・30%・20%と置くとすると、すべてを満たす人の割合は 50% × 30% × 20% = 3%です。
この3%を先ほどの式に入れると、どうなるでしょうか。本調査の必要人数を先ほどの例の400人より小さい100人、回答率を同じ70%と置いても、100 ÷ 70% = 約143人の招待に対して、スクリーニングの配信は 143 ÷ 3% = 約4,767人まで跳ね上がります。必要人数が4分の1でも、配信数は先ほどの約2,855人を上回るのです。

仕上げに確認したいのが、設問そのものの書き方です。ここで挙げる3点は、どれも該当者の判定を静かに狂わせます。
選択肢の設計では、ダミーと逃げ道の2種類の選択肢を用意しておきます。
1つ目のダミーは、対象条件となる本命の選択肢と同じカテゴリーに実在するほかの選択肢のことで、本命だけを並べると意図が透けるため、これを混ぜて隠すのが狙いです。
2つ目の逃げ道とは、「その他」「特にない」「この中にあてはまるものはない」といった、どれにも当てはまらない人のための選択肢を指します。逃げ道がないと、当てはまらない人が仕方なく近いものを選ぶため、本来は該当しない人が通過者に混ざる原因になるため、必要です。
「住宅ローンを組んだことがある方」という聞き方だと、10年前に組んだ人も該当します。「これまでの経験を総合して」と全期間を対象にするのか、「直近1年の経験について」と期間で区切るのか、「直近の利用について」と最後の1回の利用だけを聞くのか、定義を明確にするようにしてください。
記憶の新しい人に聞きたい調査で上記のような指定を書き忘れると、古い経験の人が大量に通過し、本調査の回答が「よく覚えていない」で埋まりかねません。
スクリーナーの冒頭には、職業を聞く除外の設問を置くのが通例です。調査対象のカテゴリーに関わる業界の関係者や、マーケティング・調査業界で働く人は、一般の生活者と視点が異なるため、最初に外しておきます。
業界による除外の設問はできるだけ冒頭に置くようにし、除外対象になる人に残りの設問へ答えてもらう無駄も省くようにしましょう。
最後の注意は、スクリーニング調査で集まったデータそのものの扱いです。回収データの構成比は、配信先の割付(性別や年代ごとに何人へ配信するかという枠の設定)や通過条件の影響を受けた数字であり、市場や母集団の構成比をそのまま映してはいません。
スクリーニングデータは対象者を選び出すための道具であり、「スクリーニングの結果、利用率は○%だと分かった」のように実態把握の根拠として読むと、歪んだ数字がひとり歩きしてしまいます。
Spark Research は、アサヒビールや日本たばこ産業(JT) などの大手メーカーも利用する、AIインタビューサービスです。
ここまで見てきたとおり、スクリーナーづくりの中心は、条件を設問に翻訳し、聞き方の癖まで一つずつ整えていく作業でした。手順どおりに進めても、「この聞き方で本当に該当者を絞れているか」という不安は最後まで残りやすいものです。
Spark Research には、調査の概要を入力すると調査設計の案を生成する調査設計支援AIが組み込まれています。スクリーナーの設問もAIと壁打ちしながら作成・調整できるため、条件の翻訳や聞き方の整えに迷ったとき、たたき台づくりからAIの支援を受けられるのが特長です。
スクリーニング調査の設計から分析までご一緒できますので、下記よりお気軽にお問い合わせください。
スクリーナーづくりは、設問の文章を書く作業である前に、対象者の条件に優先順位をつけて翻訳する作業にほかなりません。
必須の条件だけを設問にする、あふれた条件は本調査に回す、該当者を取りこぼさない聞き方を選ぶなど、本記事で扱った判断は、どれも配信を始める前に定義することができるものです。
まずは手元の対象者条件を書き出して、必須と望ましいの印をつけ、条件ごとの該当率を仮置きするところから始めましょう。
5問以内が理想とされ、多くても10問程度が相場です。収まらない条件は「必須」と「望ましい」に分け、必須だけを設問に翻訳して、残りは本調査で聞いて分析のときに分ける、というのが本文で紹介した手順になります。
条件ごとの該当率を見立てて掛け合わせ、出現率を仮置きしたうえで、「本調査の必要人数 ÷ 本調査の回答率 ÷ 出現率」で配信数を見積もるのが基本です。さらに回答の途中離脱を見込んで、1.1〜1.3倍の安全率をかけておきます。
該当者は条件が1つ増えるごとに掛け算のペースで減るため、条件を足すほど出現率が急激に下がるのが問題です。配信数が足りなくなれば、追加配信か条件緩和か、スケジュールの後ろ倒しを迫られます。そうならないよう、望ましい条件は通過の条件にせず、本調査に回しておくのが安全です。
そのままでは使えません。回収データの構成比は、配信先の割付や通過条件の影響を受けており、母集団の実態とは別物だからです。実態の把握が目的なら、それを目的に設計した調査で確かめます。
参考文献
Tourangeau, R., Kreuter, F., & Eckman, S. (2012). Motivated Underreporting in Screening Interviews. Public Opinion Quarterly, 76(3), 453–469.
Eckman, S., Kreuter, F., Kirchner, A., Jäckle, A., Tourangeau, R., & Presser, S. (2014). Assessing the Mechanisms of Misreporting to Filter Questions in Surveys. Public Opinion Quarterly, 78(3), 721–733.
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